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不動産鑑定士 小俣要一事務所/小俣要一
【Q1】小俣先生のプロフィールを簡単にご紹介ください。
昭和51年に大学を卒業して神奈川県庁の職員になりました。土地建物関係の部署などを数カ所勤め、同62年に退職し、不動産鑑定事務所に勤務の後、平成元年に横浜の関内で不動産鑑定士事務所を開業して、現在に至っています。
仕事の分類としては、税理士さんや司法書士さんなどの専門職業人をはじめとする方々からの紹介・依頼による民間の業務のほか、裁判所・県・市など公的機関からの依頼による一般鑑定や地価公示・相続税路線価・固定資産税のための公的評価の業務などから成ります。
【Q2】不動産鑑定士を志したきっかけを教えてください。
大学が法学部で、学部全体に司法試験至上主義のような雰囲気があり、自分は「司法試験か就職か」の二者択一ではなく、ほかにも法律系スペシャリストなどの第三の道もあるはずだと思い、この仕事に就きたいと考えました。民法や借地借家法といった不動産に密接に関係する分野について、ある程度の勉強をしたことの影響も大きいと思います。
【Q3】不動産鑑定士になるためにどんな経験をされましたか?
私が受験した頃は今と違って、まず2次試験に合格することが入口で、これが難関でした。これと前後して一定の実務経験を積み、研修を受けて3次試験に合格して資格が取得できるという制度でした。私は県職員でしたので、鑑定評価の実務経験として認められる業務に就く部署を希望して、2つの部署で計8年ほど評価実務に就いてました。 なお、2次試験は大学4年という時間の使えるときに通っていますし、今の試験とも制度などが少し違いますので(平成18年度から現行制度)、あまり参考にはならないと思いますが、試験科目の大枠は今と変わりがありません。個人的には、特に経済学は他の科目と異質なために苦労しました。
【Q4】お仕事にはどんなポリシーを持って取り組んでいらっしゃいますか?
特に民間業務についてですが、あまり「専門家面(づら)」をしないように気をつけています。不動産に価格をつけるという仕事は、今のように、価格に関する情報が企業はもちろんのこと各個人に至るまで、その気になればネットなどですぐに入手できるような時代には、生半可な知識や情報では継続的にお金をとれる仕事はできないと思います。基本的な情報は依頼者などもある程度取得している上で、それでも鑑定士に依頼されるのだということを意識し、依頼者が「なるほど、鑑定士はこういう見方をするのか」と納得するものを提供したいと考えています。
「なぜ不動産鑑定をご依頼しようと思ったのか?」、「本当に不動産鑑定が必要なのか?」、その結果、ご依頼いただけなかったとしても、お客様の利益に繋がるのであればそれでよいと思ってます。そのため、事前のヒアリング、事前見積りはとても重視しており、費用対効果を十分に検討していただけるよう配慮しております
。
【Q5】最近印象的だったエピソードを聞かせてください。
数年前ですが、裁判所から依頼された鑑定評価で、片方当事者である被告の代理人弁護士やその背後にいる鑑定士から、その鑑定評価書の内容でかなり執拗に攻撃されて、それに対する説明文書の作成をしたときには心身両面で消耗しました。1箇所が明らかに当方のミスである点を突破口に、あれこれと他の箇所でもいろいろと難癖をつけられました。そのときを含めての感想ですが、「弁護士の中には平気でウソをつく、あるいは仁義に悖る言動をして恥じない人が少数ではあるが確実にいる」ことをこの仕事を続けていると実感します。
他方、同じように裁判所の依頼の継続家賃の鑑定評価で、当方の出した鑑定評価書を採用した裁判所からの和解勧告で、それまで争っていた両当事者(貸主と借主)が何とか和解でき、当事者から裁判所を通じてお礼を言われたこともあります。
長くやっていると、辛いことが「8」、いいことが「2」くらいでしょうか。
【Q6】お客様への対応で気をつけていることはありますか?
民間の業務では今の時代に、ある個人や法人が自ら売買したり、貸借したりする物件の価格や賃料の相場などを知ることはさほど難しいことではありません。にも拘わらず、わざわざお金を払って鑑定評価を依頼されるのですから、そこには、常に何らかの必要性や背景に基づくバイアスが掛かっています。「相場では100万円のところを80万円で鑑定評価書を書いてほしい」、「どう高くても月額30万円の家賃のところを月額40万円とする鑑定を出せないか」、「相続財産をなるべく安く評価してほしい」というような依頼が少なくないわけです。そういう、一歩間違えれば「不当鑑定」の誹りを受けるような結果になりかねない依頼の中で、どのように依頼者の要請と自分の職業人としてのリスク管理を両立させるかということは、永遠の課題であると思います。
この仕事は弁護士さんや税理士さんのように、お金をもらってもその支払者の代理人的な働きをしてはならず、「常に公正妥当な態度を保持」することを求められるという、監査業務を行なう会計士さんほどではないにしても、それに似た辛さがあります。
そうは言っても、例えば、裁判で原告側と被告側の双方がそれぞれ提出する鑑定評価書の価格や賃料に大きな差が出ることは、決して珍しくないという実態もあるわけですが、基本は「公正妥当」ということですから、許容限度を超えた依頼に対して「断わる勇気」が必要となる場合もあります。
【Q7】最近はどんな依頼がありますか?
「許容限度を超える結果を求められる依頼」のほかに、「極度に急ぐ依頼」や「極度に安い報酬での依頼」があります。何事も適度というものがあります。無理をすると必ず悪い副産物が生じます。
実際には「相続の遺産分割」、「会社の現物出資」、「同族会社の役員個人と法人間の売買取引」、「不動産取引に起因して生ずる損害賠償額の算定」、「地代家賃の増減額請求 」など、依頼の目的は多岐に渡ります。物件の種類も土地・土地建物・マンションなど、さまざまです。 鑑定士としては月並みになりますが、それらの依頼の一件ごとに誠実に対応するということに尽きます。
【Q8】初めて不動産鑑定士に依頼される方へのアドバイスをお願いします。
鑑定士以外のルートで価格や賃料の相場は、すぐ分かる状況下で鑑定士に依頼されるのですから、依頼者ご自身の要望や依頼の背景・目的などをなるべく率直に聞かせていただきたいです。鑑定士に限らず、こういう職業に携わる者たちの守秘義務は職業倫理として定着していますし、例えご自身に不都合な事柄であっても、私たちはそれを受け止めて業務を行ないますので、その点はぜひ遠慮なくお話しいただきたいと思います。
【Q9】不動産鑑定士の魅力とは何でしょうか?
社会的公共的意義などと言った抽象的な側面は他の機会に譲るとして、この仕事が持つ「歩く」「見る」「調べる」「計算する」「文章を作成する」という基本動作の反復継続が与えてくれる職業的な至福感があります。少し難解な言い方ですが、つまり「デスクワークだけでもない」、「外を歩き回るだけでもない」という絶妙なバランスが何とも魅力的で、毎回これまでにない初めての物件の場所に赴いて、モノを見ていろいろな調査をした結果に基づいて文書を作っていく…というそれぞれの過程の中で「この仕事に就いて良かったな」と実感することがあります。
また、この仕事は確かに法律に定められたコアの部分は価格や賃料を出すということですが、それらを行う過程で得る多種多様にわたる不動産に関する知見をもとに、不動産関連の投資をはじめとする資産運用などの業務にも広がる、かなりフィールドの広い仕事になり得ます。
興味のある方はぜひこの道に進んでいただきたいと思います。
- 「まちの専門家グループ」の中でも大ベテランの小俣先生。グループ内でもひときわ信頼が厚く、専門家同士のあざやかな連携を作り上げ、様々な案件を解決に導いています。
- 不動産鑑定士 小俣要一事務所
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